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格闘家と夕日

​上部頚椎と自律神経の関わり

​臨床からの考察

※カイロプラクター目線のマニアックな内容です...

カイロ頸椎触診

​カイロプラクターとしての感覚

私はこれまでカイロプラクターとして十数年過ごす中で、一次性サブラクセーション(可動性減少部位)をアジャストする中でも特に第1頚椎と後頭骨の動き (環軸関節•環椎後頭関節) を修正することを重要視するようになってきました。何故かというと他の部位にアプローチしても変化しない患者さんが、この部分をアジャスト,リリースすることで劇的に身体の状態が変化する症例を目の当たりにしてきたからです。特に強いストレスにさらされている方はこの傾向が明確でした。座学で 上部頚椎と自律神経は深い関係があると習っていましたが、実際に臨床に出て肌で感じてみて、ここまでストレス症状と上部頚椎調整による症状緩和が多くみられるという事は、何か明らかに自律神経系の機能と関係があるのではないかと思うようになりました。

臨床での経験から

実際に病院でうつ病や自律神経失調症と診断された方は、後頭下筋群が異常に硬くなっており、第1頚椎と後頭骨の動き (環軸関節•環椎後頭関節) がガチガチに硬くなっています。  そうした方に後頭部をアジャストしたり、後頭下筋群をリリースすると「呼吸がしやすくなった、よく眠れるようになった、朝の目覚めが良くなった」などの自律神経が関与すると思われる症状変化のお声を頂くようになり、やはり上部頚椎,後頭下筋群は自律神経機能と関わりが深いのだと確信するようになっています。

オープンフィールド
小脳テント

解剖生理学的観点から①

​〜硬膜との接続から想像する

後頭下筋群には多くの筋肉がありますが、特に後頭骨と環椎後結節をつなぐ小後頭直筋は脊髄神経を覆っている硬膜と接続していることが分かっています。硬膜は脳,脊髄神経を覆っている線維性結合組織で、クモ膜と密着しており、ストレスによる精神的肉体的な過緊張が何らかの仕組みで硬膜に伝わり、小後頭直筋などを介して後頭下筋群に伝わるのではないかと考えたり、逆に後頭下筋群の緊張が小後頭直筋から硬膜に伝わり、神経機能に何らかの影響を与えるのではないか?と考えております。(少なくとも良い影響を与えないと思っています) 

解剖生理学的観点から②

​​脳神経のルートから想像する〜

自律神経といえば交感神経と副交感神経がありますが、頚髄,胸髄,腰髄からは交感神経節が分枝しています。そして脳幹部からは副交感神経線維を含む動眼神経,顔面神経,舌咽神経,迷走神経が出ていて、このうち舌咽神経,迷走神経は後頭骨と側頭骨で構成される頚静脈孔から頭蓋の外へ出る形になります。特に迷走神経は頚静脈孔を出た後、環椎,軸椎横突起の前を通り総頚動脈,内頚静脈,深頚リンパ管と共に頚動脈鞘という線維性結合組織に包まれて頚部を下行し、胸部•腹部に至り各臓器の機能に関与しています。また舌咽神経,迷走神経は頚動脈,大動脈弓の血圧,CO2,O2濃度をモニターし、その情報を延髄に伝える働きがありますし、運動神経線維である副神経は胸鎖乳突筋,僧帽筋上部の筋を支配しています。頚動脈鞘は頚部の筋膜と接続しているので、これらの神経の働きと走行ルートを考えると、後頭下筋群含め,胸鎖乳突筋や斜角筋群など頸部の主要な筋肉が硬化すると上記に挙げた脳神経のルートに何らかの緊張が加わり、僅かながらでも副交感神経機能に影響を及ぼすのではないかと考えております。

カイロ脳神経
カイロ 考察

​先の考察にむけて

ヒトは身体の内外からの様々な刺激を受けながら神経反射機能を介して生命活動を維持しているため、神経の働きはとても複雑です。

これまで書いてきたことを否定するわけではありませんが、カイロプラクティックで上部頚椎を調整したり、鍼で後頭下筋群を弛緩させれば必ず自律神経が整うとも断言できません。それで整うのであればストレスなどで自律神経の不調を訴えている方は激減していると思いますし、神経の反射機能はそんなに単純なものではないと思われます。しかし、はりきゅうの「きいた施術よりもきかせる施術を...」のページでも書きましたが、私は  理由が分からず「なぜか効いた施術」よりも 理論立てて考えた治療を行い、「効かせた施術で結果を導く」ことを意識することが重要だと思います。

先に書いたように解剖生理学的に考えれば、自律神経と上部頚椎部は深い関係にあるのは明らかです。鍼灸でもカイロプラクティックでも、深くアプローチ法を考えれば自律神経症状の改善に大きく貢献できると思います。

最後に、カイロプラクティック​は背骨や骨盤の動きを修正することで神経の働きを整えようとするものです。手技を施す人の中でもカイロプラクターはいわば神経のプロであり、カイロプラクターは常に神経機能のことを考えて施術しなければならないと教え込まれました。鍼灸師になったこれからもカイロプラクター目線を忘れずに皆様の施術,治療に取り組んでまいります。

​これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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